その笑顔は誰のものか

3月に認知症で施設にいる母の写真を撮りに帰省しました。

目的はマイナンバーカード作成用の証明写真を撮るため。

施設の外で証明写真を撮ることが難しいため、父に呼ばれ埼玉の老人ホームまで出向き、部屋の中で証明写真を撮りました。

ここで撮るといいんじゃない?これを着せたあげた方が良いのでは?
などと、気を揉んで父は当日まで色々と考えていたようでした。

昭和18年生まれの父は「仕事中心」「自分中心」の人生で娘たちには兎も角、
母への対応は、娘としてはなんともモヤッとやりきれない思い出が多々あります。

しかし、母が認知症になってから突然の「優しさ全開モード」が発動。

全財産と全エネルギーを母のために投入し始めました。

「お母さんのため」という見方によっては自分勝手な理由からの、施設の変更は、
自宅に戻るのことを含めた引越しは、通算5回!

それも突然引越し日を決め、当然の様に娘たちの引越の手伝いを当てにする。

そのため、私も幾度も突然、実家に行きました。

比較的自由のきく自営業だから良いものですが、勤人だったらこうは振り回せないことも、世間知らずの父は分かってないようでした。
何度か苦言は伝えたのですが、「お母さんのことが大切じゃないのか〜!」と激昂する始末。

「これ何度目の引越しだっけ??」という頃には、 姉妹で“役割分担”を確立。

私が対応した方が、父が柔軟な姿勢を見せることは私が担当、理詰めで説得した方が良いことは姉が担当と、
まるで会社のように分担をしながら姉と乗り切った数年でした。

そんな数年を経て、母の誕生月の3月に撮影した母の写真。

赤い口紅をし、父のまるで子供の撮影を応援する様な声掛けもあり、
しっかりした真面目な表情の他に、可愛らしい笑顔の写真も撮れました。

その写真をみた父が、
「素晴らしい!」「最高だ!」とびっくりするほど大喜び。

「お母さんはやっぱり綺麗な人なんだ」などと、80過ぎのおばあちゃんをベタ褒め。

予想外の父の喜び様に、父の数年間の罪悪感と不安と葛藤を感じ、それを1枚の写真が癒してくれた様で、私も心を動かされました。

今の母はふっくら元気そうで、幸せそうに見えるので娘たちはあまり心配していないのですが、父には恐らく私には想像出来ない苦しみがあったと思います。

大切な誰かの為の笑顔

そして、母の写真と父を見ながら、いつも思うことを思い出しました。

出来上がった写真に写る皆さんのその”笑顔”は、
自分のものであって ”自分のためのもの” ではない。

写真を見る誰か、”あなたのことを大切に思う誰かのためのもの” であることを。

自分の「笑った顔」が好きじゃないという方も多いです。

だけど、あなたを愛する人から見るとあなたの笑顔ほど癒されるものはないと思います。

ビジネス用のお写真であっても、笑顔は人柄をダイレクトに伝えるものとして、十分に機能します。

皆さん、私のカメラの前では観念して、時には笑顔を見せてくださいね。

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